暑中お見舞いにかえて、提案
〈第1報〉 『沖縄(産)物販、健食などにかげりが出てきました、その対策は?』
−沖縄ファンと一緒に商品開発システムサイトの構築−
最近、沖縄産品の物販をされている企業の方にお会いすると、絶対量こそ減少していないものの、これまでの勢いがない、増加率がかなり落ちているという話をお聞きします。半年か一年もすると、新聞でも取り上げられ、大騒ぎになると思います。
その典型が健康食品(以下、健食)です。沖縄県全体での売上げが公式の発表で3年前で190億円(03年度)、昨年は私の推定で240億円位です。
しかし最近、どうも伸びないという話をあちこちで聞きます。私はつぎのように見ています。
〈 アメリカも同じ経過 〉
過去のアメリカも同様な経験、プロセスを踏んでいます。アメリカの健食は順調に売上げを伸ばしてきましたが、一時、ストップしたことがありました。そして現在、また売上げは伸びつつあります。
それは、それまで一種のブーム、ムードで伸びてきた健食が、ストップしましたが、次にデータの裏付けに基づくサプリメントなど(機能性食品)や日本のトクホ(特定保健用食品)のような制度の出現によって、再度、売上げを伸ばしました。
現在の沖縄いや日本の健食も、アメリカで一時、ストップした時と同じ状況なのではなかろうか。そして本土の健食の大手メーカーはサプリメントの開発やトクホを取得して順調に伸びていますが、沖縄ではかげりが出てきています。
〈 2つの対応策 〉
健食に限らず沖縄物販(さらには観光などサービスも含め)のかげりに対する対応、対策は2つあります。
1つは商品のそのものの品質を向上させ、かつそれを認定する(認定機関などによる)。
もう1つは、消費者(沖縄ファン)と一緒にどのような商品・サービス(勿論、質も含め)を開発するかのシステム構築です。
前者の考え方は、説明しなくてもよいと思いますし、この方法で展開を進めている沖縄の企業も既にあります。
後者が少し分かりにくい(ということは自分でも整理されていない)ので説明します。先ずこの提案の背景です。
沖縄では生産(企業)機能集積がなく、工業製品づくりで日本本土と競争するのはなかなか大変です。また沖縄人の体質として、工芸品づくりは得意ですが工業品づくりは不得意です。
このようなこと(日本の生産システム)を背景とすれば、対日本全国競争の中で、沖縄は一周遅れのトップランナー方式による生産システムしかないような気がします。
〈 沖縄、一周遅れのトップランナー方式 〉
ではどのような商品・サービス開発方式でしょうか。一口で言えば、ニュー・エコノミーの下で売り手と買い手の新しい関係、すなわちユーザーが力を持つ市場に対応した商品・サービス開発システム作りです。これをまとめたのが、次の表です。
沖縄型(顧客指向型)生産システムの提案
日本の従来型 沖縄型 |
|
製品・サービス開発 |
売り手、生産者 → 買い手 |
価格 |
生産者 → 買い手、マーケット |
生産開始 |
販売前 → 販売後 |
価値 |
製品 → サービス |
経営戦略・資源 |
立地場所 → 顧客情報 |
今、そしてこれからはユーザーが市場で力を持ち、さらにはユーザーが提案、商品開発をする市場です。
上記の生産システムが可能になったのも、実現できるのもインターネット・ビジネスによって可能になりました。では、このようなシステムも具体的にどのようにすれば実現するかです。
私はどうも古いタイプ(の生産システム)で頭で解っていても、なかなか体質がインターネット・ビジネスには馴染みません。
〈 沖縄コミュニティー・サイトによる物づくり 〉
さて以下は最近、船井ロジから、(株)まぐまぐの事業開発室長に移られた野田宜成氏のアイディアというか、氏とのディスカッションの結果です。
ネット上に質の良いというか、提案指向型の沖縄ファンと沖縄産業各分野のいわばリーダーとの両者による<沖縄コミュニティー・サイト>というビジネス・プラットフォームを構築します。
このビジネス・プラットフォーム<沖縄コミュニティー・サイト>によって沖縄の新しい商品そしてサービスの開発を各種行い、実験的に、また注文量を一定量を確保した上で、生産、サービスを開始します。
B to CだけでなくB to Bで、この顧客からの提案に対してさらに沖縄産業各分野のリーダー間での、いろいろな提案、修正を加えることによって提案を敏速に、フィージビリティーと洗練さも加えることが可能です。
そして具体的なものづくりに関しては、例えば「日本月桃梶vのように、本土でそれぞれの商品ついて一流の物づくりの会社を見つけ出し、にアウトソーシングするというファブレス(企画会社)という方向もあります。
さらに、このプラット・フォームを活用してB to Bで、バリュー・チェーン(Dellのように自分はコア・コンピュタンス部分のみを担当し、他は必要な各部門で各種企業を結び付ける価値連鎖)を構築していくことも可能です。例えばこのコミュニティーの中には、本土で物づくりの得意な人、また会社に勤めている方も多いと思います。このような今一つ別の単にビジネス・ライクだけでないバリュー・チェーンも可能かもしれません。
野田氏は沖縄の商品を発見、開発して、それを本土市場に繋ぐということを数多く、成功させてきました。そして今度、メールマガジンを発行している鰍ワぐまぐに移られました。この鰍ワぐまぐは、3万誌のメールマガジンによる800万人というコミュニティーによって成立しているわけです。
この両体験を踏まえて提案されているので、非常にリアリティがあります。(なお、05年度、約2兆円であったB to CのEC市場は09年度には5兆5千億円と予測されている。)
<さっそく勉強会、研究会を立ち上げます>
当面、日本ベンチャー学会沖縄研究部会として、この提案の研究と実現に取り組みたいと思っています。
野田さんには沖大ベンチャー公開講座「インターネットで独立・開業成功への道!!」という連続講演会で9月より第3金曜日に講師として来沖していただくようにし、研究会も開催します。
小生の本提案に対して野田さんのコメント、補助説明を、このHPに掲載するか、皆さんに野田さんのHPを見ていただくかしようと思います。
◆野田さんからのコメント
沖縄ブーム去る!?
すべての業種、商品にはライフサイクルというものがある必ずブームというものは去るのである。
わかりやすいものでいくと、たまごっち・ウォークマンレコード。去る時期を敏感に感じ取らないと売上げは下がる一方になる。
沖縄もご多分に漏れずライフサイクルで言うと昨年がピーク今は、衰退期に入ったようである。
それは、いろいろの会社の売上げからわかる。
では、どうするか?
健康食品業界が一番わかりやすいが沖縄という文字が付くだけで今までは売れたが、これからはそれだけでは、確実に売上げが落ちる。
というより、落ち始めてきた。
だから、方法を変えないといけない。
沖縄の○○でなく、何が今までのお客様に受けているのか?
品質・内容・PR方法を深化させないといけない。
「沖縄の○○」 から 「ミネラル豊富で○○に良い、沖縄発」
これを、PRしていく。
PRの費用対効果が良いのがインターネット。
インターネットは、中小企業の味方。
これからの講座で、どのように強みを探し、見つけるか?
それをインターネット使ってどのようにPRするか?
これを伝えていきたい。
これから、ますます沖縄は面白くなると思う、ただし、攻め方は考えないと今までと比べると楽でなくなる。
野田さんからのコメントいただいた翌日(’05.8.12)琉球新報に「沖縄健康食品の購入をやめた理由」のアンケート結果が掲載されていました。ご参照下さい。
また、新研究テーマ「沖縄型商品・サービス開発の研究」の第2講メモを書きましたので、ご覧下さい。
【第2報】 『沖縄型商品・サービス開発の研究』
−沖縄ファンと一緒に商品開発システムサイトの構築−
第2報を述べさせていただきます。第1報では日本の既存の生産者先導型生産システムとこれからの消費者先導型生産システムを沖縄が先取りするような形で提案させていただきました。
では後者をもう少し具体的なイメージとして、また先行事例とオーバーラップさせて示してみます。
本の上では(ネット)コミュニティーによる消費者と消費者(C to C)、また消費者と生産者(B to C)のインターラクションによる物づくりを知っていた、理解していたつもりですが、私には余り現実味がありませんでした。野田提案は、どちらかというとリアルビジネスで、上記のことを提案していました。
このことをもう少し普遍化するというか、プラットフォームを加えて提案するという形で、開発システムとして、ここに提案したいと思っています。
これが第2報です。
《 (ビジネス)プラットフォームとしてのネット・コミュニティー 》
例えば、ここで提案する「沖縄スタイル・コミュニティー」のようなネット・コミュニティーは、参加する人々の趣味や嗜好などによって形成される目的別コミュニティーである。こうした目的型のコミュニティーをプラットフォームとして、さまざまなeサービス、eビジネスの可能性が出現する。
このモデルは、単純なBtoC(企業・消費者間取引ではなく、〔図−1〕のようなコミュニティーをサービスのプラットフォーム(P)にしたP+(B+C)というビジネス・タイプと呼ぶことが出来る。そして、現実にこのようなニット・コミュニティーをプラッフォームとするようなeビジネスが数多く出現してきている。
図−1
《 物、サービスを「創造する」ためのポータルeサービス 》
消費者同志が、インターネットのコミュニティーでの意見交換を通じて、企業活動に参加しはじめている例がある。
つぎのような、本田技術研究所が主催するオートバイのサイト『DREAM RIDERS』はコニュニティーの商品開発モデルであろう。
例えば5,000人のハレーのユーザーから積極的に情報が寄せられ、商品開発、改良に生かされる。従来のグループインタビューなどに比べて格段に価値のある消費者の生の声が伝えられているといわれている。 同様なモデルとしてバス釣ユーザーが集まっているコミュニティー『Super Fishing World(SFW)』、食に特化したコミュニティーサイト『Foods−Foo』は「コンテストから新商品を創りヒット商品を生みだす」という趣旨から、生活者の要望や嗜好を反映した商品を誕生させている。このようにネット場でマーケティング、商品化のノウハウを蓄積し商品開発のシステムを構築している。
( ※本講は、原田保・リンク総研・編『eサービス』、東洋経済新報社、2000年発行、第3章を参考にしている )