祝 廈門・那覇航路、就航10周年

−さらにこれからの10年(2005〜2015)のための戦略−

沖縄大学・吉川 博也

(05.04.08 メモ)

 これまで日本にとっての中国は生産のパートナー(生産基地)そして輸入品の基地であった。それが今、変わろうとしている。それは、つぎの4つである。

1.中国国内市場の急速な拡大

 ‘03年に中国の輸入規模(4000億ドル)は、日本の輸入規模を上回り、世界第3、そしてアジア最大の輸入市場となっている。中国の経済成長に伴って国内市場は今後も拡大し、日本本土市場よりも魅力的な市場になりつつある。

2.中国の対外投資の拡大

 ‘01年の中国の対外投資額は約70億ドル(国際収支ベース)で、その1割はASEAN(日本本土の投資環境より、より類似している)と推定される。

 この対外投資の拡大を支えているのは外資準備の急増である。2003年末に中国の外貨準備高は初めて4,000億ドルの大台に乗った。また中国は近年、企業の対外投資を奨励する「走出去(zou chu qu)」戦略を実施し始めた。今後、企業の対外投資は急増するとみられ、ASEAN諸国は重要な投資先である。

3.アジアにおける金融面で、中国の存在が重要

 通貨危機の再発を防ぐために創設されたアジア通貨スワップ制度に、中国は積極的に参加している。2004年現在、中国はタイ(融資枠20億ドル)、マレーシア(同15億ドル)、インドネシア(同10億ドル)との協定を結び、さらにフィリピン(同10億ドル)との交渉を進めている。中国はアジア金融市場のアンカーとしての役割を担うことになる。

4.中国人、海外観光が急増している

 中国経済の発展、国民生活が豊かになるにつれて中国人の海外観光がブームとなり、規模が急速に拡大している。2003年に中国人観光客の出国延べ人数は前年比21.7%増の2,020万人(因みに10年前の’95年は714万人)に達している。

 特にASEAN諸国には、中国から大量の観光客が押し寄せ、巨額の観光収入がもたらされた。外国人観光客に占める中国人は、タイ、シンガポールは日本人に次いで2位である。例えば2002年の数字を見ると、マレーシアでは中国観光客から得た観光収入は約4億ドルで、観光収入の6%近くを占める。中国人観光客を誘致することは、中国の経済発展の利益をシェアーする方法の1つである。

<中国経済成長とアジア、日本、沖縄> −(展望)沖縄の中国への協力・活用−

 前述したように、中国の経済成長に伴って、アジア全体に対して中国が需要アブソーバー、対外投資の出し手、金融市場のアンカー、観光の収入源とし大きな役割を果たすようになっている。

 また人民元の切り上げ圧力が高まっているが、中国政府はこの緩和政策を打出している。このいわば、ここ当面の(短期)政策に沖縄が協力する一方、利用、活用する視点も重要ではないか。何か2、30年前の日本に似ているが、元高圧力を緩和させるため、貿易黒字、国際収支黒字と外貨準備高をこれ以上増加させないため、輸入促進、対外投資と海外観光への奨励と諸規制緩和が実施されている。これによって中国の輸入市場規模が大幅に拡大し、企業の海外投資、中国人の海外観光は今後もさらに大幅に増加すると考えられる。中国に隣接する沖縄は積極的にこの機会に協力、活用すべきだ。

 ここに述べた展望を踏まえて国、県、特区、企業、南西海運のそれぞれのレベルからの政策提案をしたい。

<沖縄FTZ(自由貿易地域)からFTA(自由貿易協定Agreement)へ> −国・県レベル−

沖縄にとって中国との経済関係を強化することは、将来は日本本土よりも大きな経済利益をもたらし、今後の経済成長の重要な促進要因になる。中国とのFTAはそれを実現する有効な手段であるが、日本本土が国内諸規制や既得権益、省庁間の利益の食い違いが大きな壁となって進まない(’05年4月6日朝刊、13版)のであれば、隣接する沖縄がそれを地域的に限定することによって先取りすることは可能である。沖縄にはFTZがあり、これを地域的、機能的に拡大すれば充分可能である。また今のアジアのFTAブームのきっかけを作ったのは中国で、その動きは早く積極的でこれに対応すべきである。

FTA締結による最大の経済的利益は、貿易やヒトの移動の活発化は勿論であるが、直接投資の誘致拡大である。関税・非関税障壁の撤廃でモノが自由に流通できる市場が拡大して、生産の拡大と産業集積につながるからである。

すなわちアジアでの持続的高成長を実現するためには、’97年のアジア通貨危機、またその後の成長鈍化の経験から、FTAが有効であるとの認識がアジア各国では定着しつつある。

沖縄と経済環境が(日本本土に比較して)似ているASEAN諸国がとくに中国とFTAを決断をしたのは、市場での双方の競合関係だけではなく、補完関係を充分に生かし(ヒト、モノ、カネの自由な移動を妨げている非関税障壁が直接投資の壁となっているため)貿易・投資を拡大させたいとの期待が大きい。

しかし一方、日本はまだ、現時点では農業など国内の一部産業保護のためFTA締結には及び腰である。FTA締結が遅れると日本の産業洞化が一段と進む危険性がある。企業はコスト削減のため関税・非関税障壁のない地域内での生産を選択し、日本から出て行くケースが増えるからである。

日本経済をより広く開放し、FTAで高度成長を維持使用としている中国の活力を取り込む政策に踏み切るために本土で今のように膠着状態が続くのであれば、まず沖縄FTZ(自由貿易地域)を拡大して、試みるという提案を本土政府にしたらどうか。中国、ASEAN諸国に対しても、日本のFTA締結交渉の遅れに対して少しは言い訳にもなるし、その効果を日本本土に示すことになるのではないか。

<沖縄金融特区の活用、沖縄金融専門家会議の提案はピント外れ> −県・特区レベル−

 名護にある「沖縄金融特区」の活用について、3月3、4日また4月7日に開催された金融専門家会議が「海洋リゾートプライベート型バンキング」などを提案している。しかし私は少々、ピントが外れているのではないかと思う。 中国は4,000億ドルを超える外貨準備、そして対外投資70億ドル、さらにアジアの金融面でアンカー役を担うとしている。この中国の実力と政策とを「沖縄金融特区」に組込んだ活用を考えるべきである。

<中国への輸出開拓> −沖縄企業レベル−

 前述したように中国は世界第3の輸入市場となっており、かつ中国国内の所得格差によって、かなりの数の高所得者が出現している。沖縄では、もずくの例を挙げるまでもなくこれらに向けた輸出促進を具体的に検討する必要がある。

 そのためには中国での市場開拓、優位性のある製品の選別、さらには中国企業とタイアップし開発輸出を行い、対中輸出を拡大する必要がある。

・国際マーケティング・コンセプト・・・図2-5(47頁)参照

・沖縄資源差別化戦略・・・・・・・・・琉球新報4月3日、朝刊11面・経済「なるほど沖縄経済」の図参照

<海運会社からシステム・コーディネーターへ> −南西海運レベル−

 このような経済、企業環境変化の中で、南西海運は海運会社(勿論、現在もコーディネーター機能も少しは果たしているが)から、組織として両国の企業を結びつけて新しいビジネスを生み出す総合商社、コーディネーターをも組み込んだ会社に生まれ変わる必要がある。それにはご出席されている皆様の強力な支援が必要である。

○EMS(Electric Manufacturing Service)・・・・Sea&Air方式、図2-6(49頁)参照

 今、中国の江南地域(上海の長江下流)では、ソニーであろうがNECであろうがIBMであろうが、一括して生産を受注する、例えばソレクトロンのような(巨大な工場)EMS生産方式が発展している。これの日本本土へのロジスティックスを担うことも可能である。すなわち中国から沖縄へは南西海運の船で、そして沖縄と日本本土へ張り巡らされている航空網を利用して、各地に注文に応じて即時に輸送可能である。いわゆるサプライチェーン・マネジメントである。

○中国企業の本土進出、また沖縄企業との合併によるフロンティー立地

○中国人のリゾート地としての沖縄

 人数こそ順調で目標の500万人を超えたが、沖縄の観光産業の内実、苦しさについて、地元新聞で連載されている。それは沖縄の観光産業・企業は出発地の本土大手エージェントに依頼し、インバウンドとしてほとんど下請的に位置付けられている}(推定が難しいが1名の沖縄旅行が8万円とすると、その60%の約5万円が本土へ戻ってしまうのではないかと言われている)。このように位置付けられる大きな要因は、地元・沖縄の独自の航空会社がないことである。

 これから沖縄を中国、アジアの人々のリゾート地として位置付け、観光産業を受け入れ地中心、地場産業化するとき、船舶会社と同様、沖縄独自の航空会社の設立を再度ぜひ検討したい。(レキオス航空ビジネス・モデル参照)

<付記>

 なお、上記について私のホーム・ページの下記の部分の参照をお勧めしたい。(http://www.h-yosikawa.com

以下のアドレスを記します)

・(沖縄は)まず航路ありき     /syucho.html 

・沖縄全FTZ                     /syucho.html

・システム・コーディネーター(マッチング、コーディネート支援活動) /sien.html

・沖縄型ビジネス・モデル         /model.html

・レキオス航空ビジネス・モデル   /model.html