◇最近の私の心境、内憂外患でも少しは薄日も射してきました◇


〈誠に不運なことに〉

今年の始めは、新設の大学院(実践沖縄学)の構想・準備を進めていました。そこへ高橋先生が急遽、岐阜大学へ移られ、そのピンチヒッターで新学期の4月からスタートする授業(経営学入門)を引き受けることになり、その準備にも追われていました。

学外ではレキオス航空の国内外航空会社による吸収、会社譲渡、など1月20日の破産の決定直前まで可能な延命策の模索と交渉に当たりました。また3年前に和議を出し、当時・取締役をしていた(ということは責任もある)興徳開発(砂)の再建が本格化し、両弁護団からの依頼で2月より社長(代行)をすることとなりました。スタートのための経営陣の再編成、資金調達、返済調整など心臓に悪く頭の痛いことばかりです。いや苦労のし甲斐、人生の中でもほかではなかなか得がたい経験をさせてもらっているところです。
 そしてこの実体験を授業(ベンチャー講座)などに生かせれば、他では真似の出来ない、社会人にとっても魅力のあるユニークな講座になると思っています。
 個人的には、前年度はJICA-Net(浦添の沖縄国際開発センター)によるフィリピン、タイ、インドネシアでの遠隔授業が順調に進みました。教材(その一部を「法経学会誌」4号に掲載)の英、タイ、インドネシア語の出版計画もあり、今年度はベトナム、ラオス、カンボジアの計画もしています。これは、また来年度新設を計画をしている大学院での遠隔授業の計画を兼ね、進めています。

また今年の夏休みは、一昨年、株式公開の専門事務所(ファイブ・アイズ)で一ヶ月半研修しましたが、同様に再生機構関係の事務所での研修を予定、楽しみにしていました。今後、沖縄では、私の経験で身にしみたように、民事再生法の活用(M&A等を含め)の場面も多くなるでしょう。経営学での新しいパイオニア的な研究、また研究者があまり取り組まないニッチな研究分野になると思われます。

そんな公私共に多忙な中、3月下旬に諸事情から、学部長に選出されました。正直をいって、誠に不運なことになったと思わざるを得ませんでした。3月中旬に内々に学部長への打診がありましたが、上記の理由でお断りし続け、これで済むと思っていたのが、とんだ誤解でした。

こんなことで、自分のやりたい、予定していた事がやれなくなる、支障がでるということで、4月下旬ぐらいまでは、本当に沈んだ暗澹たる気持ちで、少々(ではなくかなり)鬱気味でした。

〈これも長年のつけ、身から出た錆〉

 これも、大学行政、経営を「雑事」と称し意識的に、避けてきた長年のつけが廻ってきたわけで、今では、身から出た錆だとあきらめています。沖縄大学に赴任してきたとき、学部新設(当時、学科しかなく)に当たって、対文部省との関係で、名目的に学部長を引き受けたことはありますが、本格的に関わるのは今回が初めてです。1995年からもう10年近く沖縄大学にお世話になったので、その最後のお礼奉公とも思っているのが、今の心境です。

 言い訳がましくなりますが、私が真骨頂(自分で言うのも変ですが)を発揮できるのは社会人対応(沖大・ベンチャー公開講座)や、実際、具体的に起業(「沖縄だからメジャーに勝てる」)できることを示すための運動、そして支援活動(レキオス航空、レキオ・ファーマ、ぬちマース、興徳開発など)だと思い、これを進めてきました。そしてこれが結果的には学生の就職の場を作り、また入学志願者を多くすることに繋がると思います。言ってみれば私のコア・コンピュタンスに時間を集中(ということは大学行政をサボり)し、大学と他とののバリュー・チェーンを構築することが大学への貢献と思っているのです。

〈沖縄問題の本質とその解決〉

 本土の方にはお分かりにくく、意外に思われるかもしれませんが、この起業支援が沖縄の環境問題の解決にもつながるのです。普天間ヘリ基地の代替地の(名護市)辺野古埋立、また泡瀬干潟埋立でも、これがいかに環境問題を広範にかつ永続的に悪化させるか、またこれらの埋立、等による経済効果がいかに一時的なものか、地元の人が一番よく知っています。

 しかし経済問題、企業倒産、失業などの恐怖から「背に腹は変えられない」というのが今の沖縄の人々の多くの正直な気持ち、いや恐れなのです。これは「基地呪縛」と同様、そう思い込んでいるのであって、実は十分、解決可能なのです。このことを具体的に示すため、私は前述の行動をとってきたのです。

 また一方で、呪縛を意図的、構造的に行っているのが本土政府で、基地の見返り(辺野古海上基地など)に、北部振興に毎年100億円(島田懇談会など)もばらまいています。そして使いもしない道路、箱物を造り、さらに余って何に使ったらよいか困っている(知恵のなさ)のが実状です。経済自立(律)をすれば、環境問題も解決します。そしてこれは補助金などもらわずに、沖縄の特性が発揮できる自由度(以前、私は全島フリーゾーンを主張しましたが、もう少し、小規模の規制緩和もその一種)を認める、またはパラダイム・シフト(スロー・フッド、一周遅れのトップランナーのような視点の転機)によって自立は十分可能なのです。

〈学内・問題山積み〉

 4月から、大学経営、行政に関わってみるとこれがまた問題、課題が山積みです。

 まず、入学者の減少で、私の所属している法経学部をはじめ、全3学科のU部(夜間)はいずれも定員割れです。それに、退学者、休学者の多さに今更ながら驚きました。このようなことに改めて驚いていること自体、大学に関心を持っていなかった身から出た錆です。それ以外財政、時代に対応したU部(夜間)の変革など、いろいろ課題、問題が山積みしています。まずは、沖縄大学の受験者、入学者の増大、また退学者、休学者の減少への取り組みです。それには沖縄大学の教育内容の充実が必要です。それを実現する教員、職員が大学(職場)を自己実現の「場」として位置付けることで、このための環境作りこそが重要です。その一つが大学院「実践沖縄学」の新設の大きな目的と私は考えています。

 そして一番の課題は、沖大生にどのようにしてキャリア・プラン(いや沖大生の場合は、まず就職)の動機付けをいかにするかです。10年前、沖大ではじめて学生に接触して、大変ショックを受けました。それは(卒業後)将来に対する希望のなさ、その反映で大学生活における刹那的な過ごし方です。(誤解を恐れずに、分かりやすい具体例を挙げます。)本土大学の交換学生のアンケートにあったつぎの言葉に代表されます。

「沖縄(大)の学生は、毎晩、飲んで歌っていられればいいのかな?」就職難の上に、仮に就職したにしても初任給が12〜3万円程度で昇任の機会が少ないというのが実態です。これでは家庭を持ち、子供の教育をしてゆくこともままならない訳で、将来への希望が持てません。

 これは学生に意欲がないのではなく、沖縄の社会自身にオポチュニティーがないからです。沖大の学生が勉強しないのは、いくら勉強しても、成績が良ければ採用してくれる企業、能力を生かせる「場」が沖縄には少ないからです。(そして結局、公務員、学校の先生ぐらいしかよい職場がないのです)。社会にオポチュニティーを多くし、かつ公平にしなければ学生の勉学意欲は湧きません。これはわれわれ大人の責任です。

 以前、勤務していた大学の卒業生へ『満々たる野心と謙虚な心を!』と色紙によく書いたことが懐かしくなります。

〈人事権、予算権もなく〉

 私ももう大学生活も長くなるので、学部長職を引き受けざるを得なかったのですが、大学のような組織(NPOも同じで一人一人が独立した人的結合組織)での学部長のような中間管理職の難しさは格別です。すなわち学部内の意見の調整・取りまとめと学部の(利益)代表として大学執行部との交渉・調整です。大学の学部長のような人事権も予算権も持たない者が、どうやって組織をこのような運営すればよいでしょうか。

 以前、私が勤務していた大学は別名を「管理大学」などと言われ、学部長がコントロールができる体制になっていましたが、実態としては不可能で調整型運営を行っていました。大学のような人的組織では、仮に人事権と予算権があってもコントロール型運営は不向きなのです。

 それは今、企業(組織)で流行(?)しているガバナビリティ論(私は統治ではなく協治と訳しています)とは対極に位置づけられます。

 大学の組織運営はビジョン提示・リーダーシップ型運営(桜井学長の志向はビジョナリー・カンパニーではないでしょうか)、かまたは調整・コーディネート型運営ではないでしょうか。そして前者は人格的な信頼も必要です。

 さて私の場合、これまで大学院についてはともかく学部については、あまりビジョンなど考えていませんし、また他教員からの信頼感などはなくむしろ不信感(あいつは勝手に何を大学の内外でやっているのかという)が強いわけですから、リーダーシップ型運営はまったく不可能です。

とすると調整型・コーディネート型運営しかありません。このタイプの運営で重要なのは、よりよい決定(客観的、時間的にスムーズ)が行われるような基盤整備(今の言葉ではビジネス・プラットフォーム)、たとえば基礎データー収集・整備、組織内でのコミュニケーションをスムーズにするためのシステム、等です。これらのことを整備することによって、組織内での決定が客観的、合理的に行われるのを促進できます。

〈大学経営のビジネス・モデルの必要性、初心にもどって〉

また今回、多少、大学経営・運営に関わって感じたのは、企業と同じように大学においてもビジネス・モデルの必要性です。すなわち、大学の教育(経営)活動を通して、学生(顧客)に価値を提供することによって、大学(企業)が利益を上げる仕組みを他(本土大学、県内他大学)との差別化したものをいかに作るかです。すなわち、大学教育活動として何を行い、どこで収益を上げるかという「儲けを生み出す具体的な仕組み」が重要です。

せっかく大学経営に関わるのなら、いっそこれも私の専門にし、本でも一冊ものにしようか(?)ともチラッと思っており、こう考えれば積極的に学部長職(この方面の専門家があまり多くないようですのでキャリア・アップにも位置づけ)にも取り組もうと思ってみたりしています。

また調整型組織運営であれば、皆の行くようなところ(合意形成)にしか行かない、無理することはないと思うと、少し気分も軽くなってきました。

さて私も取締役をしているレキオファーマ(創薬)の新薬の許可が5月14日に下り、さらに来年のマザーズでの上場を目指してスタートしました。こんなこともあり、少し薄日が射している今日この頃です。

沖大に赴任した頃は元気もよく、夏休み朝早くからサマー・セミナーを開催していました。沖縄の早朝は東南アジアに似て陽がカーッと射し、花木の香りが漂いとても気持ちよく、タイの(AIT)アジア工科大学院(授業、午前7時半開始、午後2時半終了)での若い元気のよい頃、楽しかった頃を思い出し元気になります。

今年の夏は沖縄を離れられないこともあり、初心に返って、元気にサマー・セミナーの開催など計画しています。朝早くからセミナーをスタートし、午後は早めに終えゆっくりしたり、昼寝でも楽しもうと思っています。私も「少年老い易く学成り難し・・・」の年齢になりました、まずは元気でいきます。