1.交易型ビジネス・モデル
(1)交易型物づくりの実例

※なお本ビジネス・モデルのリスクはカントリー・リスクです。つぎに例として掲げる企業は実は昨年(’03年)に特別自由貿易地域(中城)から撤退しました。それはこの生産方式が順調に進んだが故に、主要輸出国ベトナムが輸入規制(関税率の増加、輸入枠の設定)をし、輸出額が激減したからです。

 この事(カントリー・リスク)を予想して、生産ラインを現地(ベトナム)へ移しておくべきでした。

 レキオファーマ(株)も同じモデルですが、このケースでは薬の特許(化)をすること、また販売事業という大きな資金が必要な部門を国内大手の三菱ウェルファーマに任せることによってリスク・ヘッジをしました。

スピード・インダストリーズは中城湾ベイエリアのフリートレードゾーンの一角に立地している。

 同社は、オートバイのエンジン・メーカーで東南アジアへ輸出をしている。

沖縄に立地した理由はつぎの2つである。

日本に1つしかない、沖縄のフリートレードゾーンに立地することで優遇条件を与えられる事、もう1つに沖縄はエンジン部品の輸入先である中国、そして製品の輸出先であるベトナムなどの東南アジア両者に近いという地理的有利性である。

 現在、日本には4社のオートバイメーカーがあるが、これらのエンジンは1000CCを超えたいわばレジャー志向を市場にしている。確かに優秀なオートバイであるが、高価格で、かつ道路が整備されていない東南アジアの国々には適していない。現在日本で作られているオートバイは必ずしも途上国にも適しているとはいえない。

 そこでスピード・インダストリーズは、オートバイの基本である庶民の足を目標にした商品作りを目指している。その昔、日本のオートバイメーカー、例えばホンダ株式会社はスーパーカブという庶民の足として、オートバイを作った。この市場に特化した商品を作り、東南アジアへの輸出を行っている。

 その時の日本の状況が今日の東南アジアの状況である。そこで同社はこのスーパーカブの再現を目指し、かつ中国から部品を輸入して低価格のオートバイ作りを目指している。

同社のビジネス・モデル、ノウハウをつぎに紹介する。

 日本のオートバイメーカーのノウハウを基にし、部品は世界最適調達(要求水準に適合した世界一安い物)をし、マーケットはニッチ市場を狙うというものだ。

 ところが中国から実際にエンジン部品を輸入して、具体的にエンジンを作ってみなければ、どのような部品が不具合かわからない。そこで中国から部品を取り寄せエンジンを組立て、不具合、問題のあった部品を同社が独自に設計し直し、これを再発注する。特に微妙な点は実際に試作品を作らなければ分からないが、これが重要で商品の差別化になる。バスケット、プラグ、ボルトなど重要部品は日本で調達、その他の大部分、エンジン部品は中国から輸入し、アセンブルして完成車を作る。

 それぞれの部品のチェックの方法、またこのシステム全体が当社のノウハウである。

スピード・インダストリーズのビジネス・モデル


(2)交易型物づくりとは何か

紹介した企業がこれまでの物づくりと異なるので少々戸惑っているのではなかろうか。それは当該地域の原料、資源を使わず、また具体的な物づくりをしないで開発輸入マニュファクチャリングなどで製品を確保し、はたして産地、地場産業と言えるかという疑問である。

これからの物づくりは、必ずしも産物が具体的に採れたり、製造を実際に手掛けているところだけが産地ではない、これからの「もう一つの産地」は「ノウハウを持っている所」も産地なのではなかろうか。すなわち産物・製品のプロフィット・センターとして機能している場所が「もう一つの産地」なのである。

 マーケティングを実施ないしは、これまでの蓄積に基づき当該製品のニーズの特色を把握し、消費者を満足させるような生産システムを持ち、出来上がった製品、産物を格付け、販売ルートを確立し、ブランドの形成を図るという、一連のノウハウの所有こそが産地形成の条件である。

このことはマーケティング、格付け、加工、販売ルートそしてブランドの確立こそが産地形成の構成要因であることをよく物語っている。これからは市場が成熟するに従い高級化、多様化、趣味化、スピード化し、物的価値と比べて市場・技術開発価値、さらに情報開発・システム技術価値がより付加価値を増すことになる。これを別の表現を使えばスケール・メリット(規模の経済)からスコープ・メリット(範囲の経済)へということになる。