7.日本の問題解決に沖縄が役立てるか


※日本の経済政策、外交政策で日頃、私が考えていること、思っていることを結論のみ言わせてください。特に沖縄と関係することについて書きました。まったく不完全ですが、ぜひ取りあえず言いたいことです。
後日、もう少し整理させて頂きます。


日本型システムの限界
 −林雄二郎編、本間正明著、部分−  (6/23追加)

 一昨日(6月21日)の修論指導者の時、NPOをテーマにしている修論生から、つぎのような指摘というか、話題を提供されました。
 「先生と同じようなこと(本新着情報)を言っている人がいますよ。」
ということでさっそく、その本を読んでみました。林雄二郎編「新しい社会セクターの可能性」第一書林、'97年1月です。

 第1章「フィランソロピーと日本型経済システム」で、本間正明氏が2「日本型システムの限界」を書いています。これはフィランソロピー活動が中心ですが、これを経済的政策一般に少し拡大して、私なりに以下、結果のみ書き直してみました(28−30頁)。少し長いですが、お読みください。

 「日本型経済システム」とは「政官財の鉄のトライアングル」を上部構造に、企業と個人間、企業相互間、企業と金融機関に結ばれた「日本型企業システム」を下部構造とする独特の体制である。
 公共セクターでは各省庁別のきめ細かな責任分担体制が構築され、許認可、通達、行政指導等に基づく「一元主義」的な公共的意思決定がなされてきた。そして民間セクターにおける企業と個人は、その枠組みの中でひたすら生産者、労働力としての生産効率の向上に努め、経済成長の促進を図る役割に徹してきたのである。
 この日本型経済システムが、経済成長の促進・維持という観点から、世界に冠たる成長をもたらしたことは間違いない。しかしその結果、公共的な活動のすべてを、政府に任せておけば良しとする「御上一任」的な意識が民間セクターに定着することになった。

 個々人の多様な価値観を認め、政府とは異なる立場から公共的な問題に関わっていく、その多元性こそが社会全体の厚生の向上に役立つ、という「多元主義(プルーラリズム)」こそが重要である。
 民間に対する信頼と民の自己責任を核とする新しい日本型経済システムを、抜本的な制度改革によって確立することこそが、様々な次元で求められている。「多元」的なアプローチを許容するシステムを構築し、危機に際してリスク・プールを多様化(危険分散)する改革こそが、新しい時代にふさわしい水平的なネットワーク社会を実現する。

 その通りです。一度ぜひ、この本をお読みになってみてください。単にNPOのことだけではなく、日本全体の制度改革にとって重要です。




<日本が抱えている、とくに沖縄にとっての課題、問題>

○沖縄にとって、どうしても必要な「東アジア経済圏構想」
 日本がこれまで『東アジア経済圏構想「ASEAN+3(日本、中国、韓国)」』に躊躇し続けているのは、対米配慮から、また対中関係といった外交上の政治問題、これに加え大きな国内政策である農業問題があるからだ。 

 日本が仮にこのような理由から「東アジア経済圏構造」に躊躇していても、これらの経済圏に接する沖縄はそのようなわけにはいかない。東アジアとの共通の課題を掲げ、ネットワークを幾重にも積み重ね、よりグローバルな連携のもとに問題を解決し、平和と共存を作り上げていくことが必要である(これについては、吉川博也・緒方修 著『沖縄・大交易スネッサンス』社会評論社、’96年6月、同『沖縄・台湾・福建経済圏の構想と実現化 〜アジアとの共存をめざして)』東アジアプレビュー、’97年7月、などを参照されたい)。

○最悪な外交、対外戦略
 日本は外交問題では、追い込まれるまで決定を先延ばしにして、最後は外圧に屈して妥協するということを繰り返して来た。近くはクラスター爆弾廃止でも最後の国になってしまった、また農業の自由化問題では「ミニマム・アクセス」という大きな誤算という結果となった。また沖縄の辺野古の基地も同様で、今から10年先に米軍基地を作っても、世界情勢の変化を考えればいかに無用になるかは明らかで、それを米国(軍)が言うからというだけで建設している。
 また東アジア経済圏構造についても、これまでむしろ阻止さえしてきた中国が、イニシアティブを取ってきた。日本は中国への対抗意識に捕われることなく、中国のこの姿勢も積極的に評価することが必要である。そうしなければ、日本の外交政策はまたアジアで同じ様な鉄を踏むことになるのではないか。

○最大の国内問題、農業
 一例を挙げれば、東アジア経済圏という対外戦略に日本が今ひとつ積極的でないのは、国内政治、経済上の最大の農業問題を抱えているためである。日本の外交、対外政策が戦略的でなく、受身的、妥協的なのは実は農業問題に原因がある。そして日本として、将来の農業のあり方についての展望はまったく見えてこない、ということは対外政策にも展望がないと言ってよいだろう。
 沖縄にとって何よりも同様に、日本の農業問題の解決は、単に日本国内問題としてではなく、東アジアと農業分野における地域協力、すなわち谷口誠氏の提案する「東アジア共同農業政策」(谷口誠 著「東アジア共同体」岩波書店、’04年11月、を参照されたい)である。 
 また一方で、米国の食糧輸出(余)力は膨大な助成金、資金力、そして長期戦略によって初めて可能になった。またEUの農業が維持されているのは、予算の約半額も農業の保護育成に費やされて初めて可能になったことも理解しておく必要がある。

○国家としてのエネルギー・食糧戦略があるのだろうか
 日本は国家として、長期的で明確なエネルギー戦略、食糧戦略を持っていないのではなかろうか。確かに資源エネルギー庁の「エネルギー基本計画」、「バイオ燃料技術革新計画」などがある。大変失礼ながら、これは国、官僚の作文にすぎず、いかに表面的、形式的で、かつそれを支える実行力と大胆な国際的な戦略とに欠けているかは明らかである。これはエネルギー資源を持たず、かつ食糧自給率が40%を切っている日本にとって大問題、死活問題である。
 そして今や、原油価格が1バレル150ドルを突破するという、高騰が予測されている。その背景には中国、インドの中産階級の急増によるエネルギー需要の増大と、その穀物価格の急上昇がリンクしているので、これは今は確かに投機資金の流入によるが、現物がこの穴埋めをするということが続きそうである。日本は国家として、エネルギー戦略、食糧戦略、さらにはこの両者をリンクさせて、今すぐに取組まなければ日本の没落は急速に現実味を帯びてきている。


<問題解決の提案>

○官僚主導システムからの脱却
 すべての計画を国の官僚主導システムに頼り、護送船団方式によって成功したのは10年前である。以前(10年程前までは)、世界の各国で行なわれていた経済計画は、事前にすべてを計画し、その通りに実行しようという、いわば社会主義的な「計画経済」であった。
 また、今でも日本の大学では計画論といえば、この計画経済論が講義されている。かく言う私も、あまり大きなことは言えない。実は「第二次沖縄振興計画」の専門員で、計画の柱となった計量経済モデルを担当した。いや、だからこそその反省のもとに発言している。

 しかし、この「計画経済」を中心に、国家の経済を計画、運用、実行しようとしているのは、今では日本ぐらいではなかろうか。これは逆に言えば日本は、この「計画経済」、またはそれに従って働いていた、いわば「護送船団方式」(グループでの行動の例として)」が、いかに高度経済成長を導き、効率が良い方式であったかを示している。未だにこの「計画経済」の夢を捨てきれないのが日本である。これが、日本が低成長を脱出しきれない一つの原因ともなっている。

 今でも社会主義国の中国、そしてかつて社会主義国であったロシア(旧ソ連)でも、企業と地域に規制緩和とインセンティブを与え、経済的チャレンジを誘発させる、その結果が良ければ全面的、全国的に採用するという方式を試みている。これが一番安全で失敗のない、かつ効率的な方法である。現在、中国やロシアの経済的な成功は、これも一つの要因である。私は「アクション・リサーチ」(注・1)と称して後述する<沖縄での具体例>のように、いろいろ試みているが、これとは少し視点は異なるが、「実験経済学」と言うようなものもあり、これらの理論化も試みられている(川越敏司著 実験経済学」東京出版会、’07年10月を参照されたい)。

○がんばれ特区、さらにこれを越えて
 国はこれまで自治体(企業に対しても同様)に対して、事細かなマニュアルを作成し、これで行政を行なっている。それも気候も風土も異なる、北は北海道の稚内市から南は沖縄の与那国(町)までまったく同じマニュアルである。
 これでは却って、地域特性の発揮も自治意識を摘むことになる。このようなマニュアルまかせでは、それぞれの自治体の行政を判断し、育成、評価、批判する一番重要な住民の意識が育たない。
 国はこのマニュアル、モデル行政をいつまで続けるつもりなのであろうか。

 今ようやく特区(また構造特区)制度などを設けて、規制緩和(改革)によって企業、自治体の地域の活性化に繋げようという制度が作られた。まずはこれを評価し、「バイオ特区」の提案をしてみたい。
 しかしそれもいわば国の手の範囲内であって、企業、自治体に対してコントロールの効くものである。孫悟空がいくら飛んだと思っていても、それはお釈迦様の手の内だったことと同じである。
 これから重要なのは国の手の内、コントロールを超える企業、自治体をいかに育成し、出現させるかが重要なのである。それによって初めて国自身も時代に適するように変わるし、変えられるのである。

○外交、対外戦略を補完する地域、民間外交戦略
 この日本の常に陥りがちなこの最悪の外交、対外戦略を避ける一つの方法は、各地域に適する可能な、多様なそれぞれの政策をとることである。そのことによって外交、対外戦略のリスク・ヘッジ(マネジメント)をすることが、日本全体のとっては一番無難な方法、いや今の外交にとってこれしかないのではなかろうか。
 ちなみにこのクラスター爆弾の廃止を提案し、大きな役割を果したのは、人口わずかな500万人のノルウェーである。このことをみれば沖縄にも大きな可能性がある。

○「エネルギー政策」と「農業政策」のリンク
 いま日本に求められているのは、農業の構造改革の推進であって、その「東アジア共通農業」を踏まえた東アジア地域からの開発輸入(これには少し説明が加えなければならないが、ここでは前掲の谷口誠論文をお読み頂くことにする)の促進である。

 さて、これを具体的に可能にするには「食糧とエネルギーの両立」を図ることであり、その実行力は民間と地域(自治体)の活力を活用することである。またこれは戦略の多様化、分散化(これによって国のリスク・アバージョン)が図れる。すなわち国はこれらのことを支援する免税、規制緩和、補助金などによりインセンティブを与えることである。さらにはアドバンテージ・ルールなどのよって、個別の指示なしに全体が進むシステムを考えるべきである。

 これに代わる企業の活力で、それぞれの特色を生かした多様なエネルギー戦略、食糧戦略に取組む必要がある。このことが、とにかく画一的になりがちな国家政策のリスクを分散させ、そして、この地域の多様な政策の総合化が、逆に国家として統一性的に寄与することになるのである。
その具体的な提案書は『5/29 環境と社会にやさしく、沖縄の適したバイオ・ディーゼル燃料』を参考にされたい。

○沖縄での具体例
 少し私的な見解で申し訳ないのですが、小生達が新たに試みた(kろえをアクション・リサーチと称しているが)「沖縄・那覇・与那国島・臨時開港(オープンポート、海外との貿易が可能)」、「中国・アモイ、沖縄航路(海・空)開設などがある(「私の主張」の部分を参考にされてください)。これが可能になったのは、当時の大蔵省関税局長、運輸省航空局長、沖縄地区税関長、沖縄郵政管理事務局長などの個人的な裁量を含めた規制緩和によるものである。
 県、地域による試みは十分可能であり、最近話題になっている沖縄道州制もこのような具体的な実態に基づいた積上げによって、はじめて実現化するのではなかろうか。

つぎに、沖縄でのエネルギー戦略について、これらを実現するために「沖縄バイオ特区」についても提案してみたい。




(注・1)