3.『沖縄がバイオ燃料を輸入する理由』

<欧米と日本の状況の違い>
 バイオディーゼル燃料は、地球温暖化ガス削減対策として、その普及が取り組まれている。しかし日本と欧米のバイオディーゼル燃料をプッシュする勢力と状況はかなり異なる。
 欧米のバイオ燃料の普及はディーゼル自動車を推進する強力な自動車企業、農業政策や余剰農産物をプッシュする行政政府や農業団体である。これに対して日本は身近な環境問題解決のために意識の高い地方自治体、NPOやボランタリー組織、中小企業である。

<バイオ燃料は琵琶湖環境改善から>
 その典型的、また推進役ともなった琵琶湖の環境改善運動である。それは琵琶湖の水質改善のための家庭からの廃食油を回収し、当初は石鹸を作り、そしてさらに廃食油のバイオディーゼル燃料としての利用であった。それは単に廃油からバイオ燃料を作るだけではなく、転作用に菜の花を植え、菜種油を家庭での料理に使い、廃食油として回収し「地域自立の資源循環サイクル」にした、これが刺激となって、さらに「菜の花サミット」になり、広島、茨城県など全国的な広がりとなっている。

 たまたま小生の知人に琵琶湖の汚濁改善で、廃食油によるバイオ燃料事業をしている「びわこバイオラボ梶vがある。そこが最近、カンボジアでジャトロファ事業を計画している。そこではジャトロファ事業に協力・支援する代わりに、ジャトロファ燃料オイルを原産地とシェアーしようというものである。本格的にバイオ燃料による環境問題に取り組もうとすると、周辺から集める廃食油からのみでは、原料が圧倒的に不足する、それを解決する方法が途上国を支援し、それと相互に分かち合う方法である。

<沖縄の廃食油の小史>
 以下については、限られた関係者からのヒヤリングによるので、誤りもあると思います。修正などご指摘、ご教示いただければ幸いです。
 沖縄の廃食油の利用は、本土への復帰前も後も米軍(基地)からの放出(品)利用から始まる。これを純正ラード(予想、年間1,800トン)として(という名称)で家畜用の飼料として、日本本土へ輸(移)出していた。それは具志川(川崎)にあったが、周辺への悪臭、また復帰後の環境規制が厳しくなったことから、コザ市(当時)の池原へ移動が試みられたが、住民の反対で挫折する。これらは沖縄の特殊事情が関係したと思われる。
 その頃('03年2月)本土の環境改善運動とも関連し、沖縄の「美しい海を守りたい」、「身体と障害者雇用の創出」などの目的で、沖縄県油脂事業協同組合が生まれ、県産業振興公社からの指導を受け、糸満市の西崎に工場が出来る。ここでは、廃食油を「油分水熱分離」して再生油にして、本土に配分飼料として出している。


                                  沖縄タイムス 2003年5月28日(水)夕刊
                 


 そして、31の企業と契約を結び456トンの回収からスタートした。最高時は1,600トン/年近くあったが、現在('07年)は1,400トン/年である。これまで無料であった廃食油が有料化したり、バイオ燃料装置の市場参入によって廃食油の競争が激化したりして、廃食油(回収)環境が変化したためである。
 例えば、'04年頃より本土からBDF(バイオ・ディーゼル・フェル)製造機(推定で沖縄には10台ぐらい)が入ってきており、廃食油を燃料に利用していると思われ、これが同組合の収集、処理量が減少した理由と思われる。
 さて、現在のBDF装置ではBDFの最終段階の洗浄するときの排水処理に問題がある。また沖縄でのBDF製造量ではグリセリン(処理費用が大きい)に問題が生じるので、これらの点を考慮して私たちは沖縄では(年間気温10℃以上)可能なSVO(何も足さない、何も引かない)を開発使用することにしたのである。

<沖縄県内、廃食油の発生量>
 沖縄の場合も琵琶湖の環境改善運動と同様に仮定し、廃食油をバイオディーゼル燃料に利用するとしよう。沖縄の廃食油発生量であるが、「廃食油のBDF利用社会システム構築事業可能性調査」(2006年調査)によれば沖縄での一人当たりの廃食油は、1,490g/年(住民の最大の協力が得られた場合)である。従って沖縄の人口が137万人であるので、すべてこれが燃料として利用できたとしても2,041トンである。
 一方、沖縄の軽油の販売量は約26万キロリットル(2006年度、259,985キロリットル)である(月刊ガソリンスタンド2007 別冊実用統計資料A販売量の推移)ので、比重が0.84であるので、21.84万ktとなる。沖縄で廃食油がすべてバイオ燃料として利用されたとしても、軽油の販売量に対して0.87%で圧倒的に不足することがわかる。このような理由から、バイオ燃料を外部に依存せざるを得ない。さらに国内でのバイオ燃料の調達が絶対量として難しいことから、海外に依存せざるを得ない。これからも国内からの移入が難しいことがおわかり頂けると思う。(参考として全国のマクロデータを示した。注・1、2)

<廃食油を混合したバイオ燃料>
 沖縄の廃食油回収、処理関係者の間で、最終処理の本土への依存脱却、またグリセリンの処理(ドラム缶貯蔵や燃焼)、及び洗浄時の排水処理の抜本的対応が検討されだしている。
 私達もこれらの問題解決に協力していきたいと思っている。例えばジャトロファ燃料(油)に5%(沖縄は動物性脂肪が多い)程度の精製した廃食油の混合は問題にならない。今、廃食油を混合したさらに沖縄の環境問題解決にプラスαになる、バイオ燃料の提供をしたい。

<廃油からエコ燃料、石垣市>
 
琉球新報7月6日(日曜)の朝刊に添付の記事がありました。特に、離島は燃料価格の高騰、またスケール・メリットが小さく廃食油の処理にコストがかかるなど、環境問題が大変です。ぜひ頑張ってください。
 私たちもマクロ(CO2削減や原産地の保全、等)だけでなく、ミクロ(廃食油)もぜひとり扱いたいと思います。ジャトロファ・オイルに県内の廃食油の混合を計画しています。

          


(注・1)日本全体のマクロ的な検討
 植物油の現況を見ると、バイオディーゼルの原料の国内での確保は難しい。
 マクロ的に見てみよう。
 例えば、'04年度の国内の運輸部門での軽油の消費量は3,721.6万キロカロリー(『バイオディーゼル最前線』 p.153)である。
 さて日本の廃食油は40〜50万トン(『バイオディーゼル最前線』 p.153)あるといわれている。廃食油の回収システムの確立はいろいろ課題が多いがすべて回収され、バイオ燃料として利用されたとしても1.3%にしかすぎない。
 また、家庭からの廃食油発生量の中で最大値に近い値は950kg/一人・一年(『バイオディーゼルハンドブック』 p.15)といわれているので全国人口は12,685万人であるので、約12万tである。この計算では0.32%である。
 また'06年に総合戦略として閣議決定された「バイオマス・日本総合戦略」でも、2010年までに原油換算50万キロカロリーのバイオマス由来の導入、それでもほとんど輸入を見込んでいる。

(注・2)国内耕作放棄地のポテンシャル
 参考として国内のバイオディーゼル原料燃料ポテンシャルを示してみたい。
 国内での耕作放棄地などを活用した場合の、バイオディーゼル原料燃料を引用してみたい。
 結論としては絶対的な国内調達バイオ燃料不足である。現在、日本中の耕作放棄地17.3万ha、不作付地14.3万haで合計31.6万ha「バイオディーゼル最前線」(工業調査会、'06年)でこれを菜種を種子とし、菜種油が285tである。そしてこれをBDFで換算し、約3,154キロカロリ-とすると、さらに現在の廃食油の回収量年間50万tを加えても軽油消費量の1%にしかならない。このようにポテンシャルを仮定しても絶対的なバイオ燃料原料の不足である。